資産除去債務・基本の仕訳

資産除去債務は、時間の経過に合わせて資産除去債務を増減させることに慣れれば、それほど難しくないかも?
細かい計算が多いから、間違えないように注意しよう!

資産除去債務とは?

有形固定資産の取得、建設、開発または通常の使用によって生じ、その有形固定資産の除去に関して法令または契約で要求される法律上の義務およびそれに準じるもの

「売却」「廃棄」「取り壊し」「リサイクル」などが除去に該当するよ。

基本の仕訳:ステップ①資産除去債務の算定

仕訳の前に、まずは資産除去債務の金額を算定する必要があります。
なぜなら、資産除去費用の見積もりは将来のキャッシュフローなので、現在の資産除去債務額を計上するためには、現在価値に割引く(割引現在価値にする)必要があるのです。

では次の例で、資産除去債務額はいくらになるでしょう?

<例>

×1年度期首に機械30,000円を取得し使用を開始した。機械は3年の定額法、残存価格0で減価償却する。
この機械は除去の法的義務があり、3年後に除去するときの支出は2,000円と見積もられた。
除去債務の割引率は5%で算定する。

3年後に支出される2,000円の割引現在価値はいくらだろう?

割引現在価値はの計算式は・・・(n年後の資産の価値)÷(1+割引率)n

例の場合、3年後の資産価値を算定するための割引率が5%という意味なので、次のように計算します。
2,000÷1.05÷1.05÷1.05=1,728

答え・・・資産除去債務1,830円

基本の仕訳:ステップ②資産負債の両建処理

ステップ①で算定した金額を使い、次のような考え方で仕訳を起こします。

  • 資産除去債務は・・・有形固定資産が発生したとき(取得時など)に負債として計上する。
  • 資産除去費用は・・・資産除去債務と同額を、有形固定資産の帳簿価格に加算し、資産として計上する。

<取得時仕訳>

機械 1,728 / 資産除去債務 1,728

資産除去費用は、取得にかかるコストと同様の考え方。だから借方の「機械」は発生した費用額を取得原価として本体に合算する意味になるよ。

基本の仕訳:ステップ③除去費用の費用配分

ステップ②で資産計上した除去費用は、関連資産(例の場合は「機械」)の減価償却と同様に各期に費用配分します。

資産除去費用として計上した1,728円を3年(定額)で減価償却するので次のような仕訳です。

<費用配分仕訳>

減価償却費 576 / 減価償却累計額 576

基本の仕訳:ステップ④調整額(利息費用)の処理

ステップ①で取得時の現在価値まで割り引かれた資産除去債務を、時間の経過と共に見積額まで戻す調整をします。(今回は借方科目を減価償却費で調整します。)

取得時に使った割引率5%分が決算毎に戻るので、初年度は次のように加算します。

<調整仕訳(初年度)>

減価償却費 86 / 資産除去債務 86

※1,728×5%=86

時の経過分の調整は計算の手間がかかるし、端数処理もあるので間違えやすそう。。(ここでは端数を四捨五入しています。)

基本の仕訳:ステップ⑤除却

定められたタイミングで機械の除去(廃棄等)の処理を行う。当初の見積額と、実際の支払額に差額が生じた場合は費用処理する。(試験問題でも実務でも、差額が出るのが普通。)

以下は見積額と実際支払額に100円の差が生じた場合の例。

<除去仕訳>

減価償却累計額(機械+資産除去債務) 31,728 / 機械 31,728

資産除去債務 2,000 / 現金 2,100
資産除去費用 100

似たような科目名が多くて混乱しそう。。

まとめ

全体をまとめると次のように推移します。

A
機械価格※1
B
減価償却費(機械分)
C
減価償却費(除却費用の費用配分)
D
減価償却費(調整額)
E
減価償却費合計(B+C+D)
F
減価償却累計額(B+C)
G
資産除去債務(期首残高+D)※2
H
資産除去費用
×1年度期首(取得時)31,7281,728
×1年度期末(決算時)31,72810,0005768610,66210,5761,814
×2年度期末(決算時)31,72810,0005769110,66221,1521,905
×3年度期末(除却・決算時)31,72810,0005769510,66231,7282,000100

※ 1本体30,000+資産除去費用の現在価値1,728

※2 G資産除去債務の計算・・・×1年度期末1,728+86、×2年度期末1,184+91、×3年度末1,905+95

Posted by しろ